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![]() トレバー・ホーン Trevor Horn トレバー・ホーンの名前を知らなくても、ロシアのお騒がせデュオ「t.A.T.u.」はみなさん良くご存知ですよね。 トレバーはあれのプロデューサーなんです。あれで売れまくっちゃって、「復活」なんて言われてます。 でも、そんな最近の活躍だけでない、奥深い彼の世界をぜひ知っていただきたいんです。 トレバー・ホーンは1979年、ジェフリー・ダウンズ(のちに「Asia」)とユニット「バグルス」を結成。エレクトリック・ポップのヒット作「ラジオ・スターの悲劇」を生み出しました。味わい深い傑作で、今もマニアの間では愛聴されています。 ところがその翌年、ジョン・アンダーソンの抜けたイエスに、バグルスはなんとユニットごと加入してしまいます。これにはびっくりしましたが、彼らの入ったアルバム「ドラマ」は、イエスの長い歴史の中でも最もポップな作品と言え、なかなかのデキです。でも、やっぱりプログレのリード・ヴォーカルはシンドかったらしく、ライブでイエス・ファンの罵声をあびるなど散々な目にあったトレバーは、すごすごと脱退してしまいます。 失意のトレバーは、二度と人前では歌わないと決心したのでしょう。 1983年、イギリスのエレクトロ・ポップ・バンド「ABC」をプロデュース。「ルック・オブ・ラブ」は全米18位のスマッシュ・ヒットとなります。ゴージャスなんだけど、どこか変。ぶあついストリングス、なつかしいモータウン・サウンドのようなソウル・フィーリング、やたらクリアーな音響などなど、トレバー・サウンドのエッセンスがすでに凝縮しています。 そして同年、今度は、世話になったイエスにプロデューサーとして恩返し。「オーナー・オブ・ア・ロンリー・ハート」という、イエスにとって初の全米ナンバー・ワン・ヒットを生み出します。サンプラーによるオケ・ヒットを大胆に使い、タイトなリズムに、イエスらしいプログレ風味と、ポップなアレンジが共存。今聞いてもその職人技にホレボレいたします。 フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドによる「Relax」も、全米10位獲得と大成功。 あとは、プロデューサー街道まっしぐらです。トレバー・ホーンがプロデュースしたアーティストは、主なものだけでも: プロバガンダ、シール、ブライアン・フェリー、ゴッドレイ&クレーム、シェール、グレイス・ジョーンズ、トム・ジョーンズ、ポール・マッカトニー、ペット・ショップ・ボーイズ、シンプル・マインズ、ロッド・スチュアート、ティナ・ターナー、ウエンディ&リサ、マーク・アーモンド、バリー・マニロウ、マルコム・マクラーレン、マイク・オールドフィールド、スパンダー・バレーなどなど多数にわたります。 トレバー・ホーンのプロデュースの特徴は、「対象となる音楽を限界まで磨き上げる」ということです。武器になるのは、Digidesign社の「プロ・トゥールズ」。すべての演奏をコンピューターのハード・ディスクに取り込んで、切ったり貼ったり加工したり、好きなだけ自由にできる道具です。現代のレコーディングではみな使っていますが、トレバー・ホーンは最も「使いたおしている」一人と言えるでしょう。 あまりに作り込むので、「オーバー・プロデュース(やりすぎ)」と批判されることもあります。確かに彼のプロデュースは、アーティストの個性と自主性に任せるプロデュースの対極にあるといえます。アーティストは、時としてトレバー・ホーンと一体化し、あるいはトレバー・ホーンの道具と化したかのように思われるときさえあります。 例えば、トレバー・ホーンが見出したシールは、従来のブラック・ミュージックにない洗練されたアレンジとプロダクションで、95年にはトレバーに初のグラミー賞をもたらしました。シール自身も個性的ですが、どこまでが本人の才能で、どこからがトレバー・ホーンの手によるものか、判別しにくいともいえます。そのため、第三作では、シール自身ほかのプロデューサーを探しましたが、結局トレバーのところに戻り、第四作でも迷わず二人は組んでいます。あくまで洗練され、研ぎ澄まされたゴージャス・サウンド。最新鋭の録音技術を駆使した音響空間。最高の演奏と個性あふれるアーティスト性。トレバー・ホーンは現代音楽シーンに確固たる個性を確立しました。 さて、前置きが長くなりましたが、このトレバー・ホーンが1983年にプロデュースし、デヴューしたのが「アート・オブ・ノイズ」です。当時最新鋭だったフェアライト・シンセサイザーによるサンプリング・サウンドを大胆に使った前衛的なユニットで、その後、御大トム・ジョーンズにプリンスの「Kiss」を歌わせたり、「ピーター・ガン」でヒットを飛ばしたりしました。 そのアート・オブ・ノイズが1999年、トレバー・ホーンのプロデュースの元に再結成され、発表したのが「ドビュッシーの誘惑」です。 ドビュッシーはいうまでもなく、19世紀フランスが生んだ偉大な作曲家で、「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」など超有名ですね。その、ドビュッシーの代表的メロディーをモチーフに、現代的な音響技術の粋をつくして再構成するのが、この「ドビュッシーの誘惑」です。 ドビュッシーの印象的なメロディーが、時にドラムン・ベースの激しいリズムに乗り、時にファンキーに、ときにヘヴィーに、現れては消えていきます。幻想的なアレンジでは、限りなく華麗に、荘厳に、19世紀音楽の精髄が立ち上ります。 ドビュッシーの楽曲は、転調に次ぐ転調、夢幻的な和声を身上とし、まさに革命的なものでした。本作品は、そのドビュッシーの現代性を問うた画期的な作品とも言えましょう。 トレバー・ホーンは、プロデューサーとして全体の指揮をとると同時に、あらゆる技術を駆使してサウンド全体を作り上げていきます。アン・ダドリーほかアート・オブ・ノイズの旧メンバーに加え、元10ccのロル・クレームまで参加。才人たちのセンスがほとばしります。 アンビエント・ミュージックとしても、あるいはシリアスな実験音楽としても、聴き手の好みによって自在な世界が広がる野心作。クラッシック・ファンにもポップ・ファンにもぜひ聴いていただきたいです。 さて、トレバー・ホーンの底力を堪能いただくには、こんなアルバムもおすすめです:
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アート・オブ・ノイズ ドビュッシーの誘惑 Art Of Noise The Seduction of Claude Debussy ![]()
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