アストル・ピアソラ
タンゴ:ゼロ・アワー
Astor Piazzolla
Tango: Zero Hour
白状すると、アストル・ピアソラ、まだあまり聴きこんでいません。アルゼンチン音楽や、タンゴの奥深さも知りません。
ホントは、ここで語る資格なんかないんです。
でも、この「天才」の異様なまでのすばらしさは分かります。
誰がなんて言ったって、ワールド・ミュージック部門の筆頭候補は、ピアソラ以外考えられません。どうしても、みなさんにご紹介したいんです。
アストル・ピアソラは、1921年アルゼンチンに生まれ、1992年に亡くなりました。演奏するのは「バンドネオン」。早い話、アコーディオンです。
97年、サントリーのコマーシャルで、ヨーヨー・マの演奏するピアソラの「リベルタンゴ」が話題になりました。以降、日本でも「ワールド・ミュージック」ブームの一環で、アコーディオンをプレイするアーティストがたくさん出てきました。こういった動きの根っこにあるのがピアソラなんだと思います。まったく問題外の圧倒的な存在感をもって、ピアソラは影響力を及ぼしているんです。
伝統的なアルゼンチン・タンゴをベースに、ジャズやクラッシックなどを大胆にを融合させ、ピアソラは精力的にオリジナル作品を書き続けて行きました。タンゴの境界線を拡大し、埋もれかけていたタンゴを変革して行ったんです。その作風は、とんでもなく洗練されており、高度な和声やリズムをともなう独自の世界を構築しています。

タンゴ独特の哀愁たっぷりなフレーズから、突然、不協和音の連続による攻撃的なアンサンブルに突入。単純さといったこととは無縁の挑戦的な展開。南アメリカの果てに、なぜこのような高度な音楽が生まれたのか。
何十年も前の音楽とは思えない、近代性というか超時代性も感じることができます。これは、まさにピアソラの頭上に光臨した「天才」のなせる業であり、ほかの誰にも似ていない、屹立した個性と言っていいでしょう。
実際、本国アルゼンチンでも、「ピアソラは難しい」ということで、はじめはぜんぜん受け入れられなかったらしいです。めげないピアソラは、アメリカで演奏活動を続けたりしながら自分の音楽を追求し、60年代には、本国でも確固たる人気を確立して行きました。目先の人気を追い求めず、自分の道を切り開いていく。まさに尊敬すべきはその点なんですね。
さて、本作「タンゴ:ゼロ・アワー」は1986年、五重奏団によるピアソラ後年のスタジオ録音で、本人いわく「「これは紛れもなく、私がこれまでの生涯で作り得た最高のレコードだ。我々はこのレコードに魂を捧げた」というしろものです。
ピアソラが思う存分やりたいことをやり切った、と言うだけあって、なかなかへヴィーです。寝る前に軽く、というわけには行かないかもしれません。ピアソラと戯れるのには、ちょっと覚悟がいるんです。
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ピアソラはアンサンブルをどんどん変えていきました。彼の奏でるバンドネオンに加えて、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、エレキギター、そのほか、サポート楽器奏者を変えながら、独自の世界に磨きを掛けていきました。ベースは五重奏団ですが、60年代中期には八重奏団に拡大し、また基本形の五重奏団へ。70年に入ったら、コンフント(九重奏団)にまで拡大して行く、といった具合です。これらの「ピアソラ楽団」の催す、ライヴもとてつもなかったようで、多数のすぐれたライヴ盤を残しています。
限りないエキゾチズム。ピアソラの音楽は、人間の根源たる「愛と情念」の世界を鋭くえぐって、聴くものを地球の反対側まで楽に連れて行ってくれるんです。
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<アルバム・データ>
発表年: 1986年
レーベル:Nonsuch
曲目:
1.タンゲディア3 2.天使のミロンガ 3.キンテートのためのコンチェルト 4.ミロンガ・ロカ 5.ミケランジェロ’70 6.コントラバヒシモ 7.ムムキ |
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