イヴァン・リンス
Ivan Lins / Anjo de Mim
マイルス・デイヴィスは晩年、イヴァン・リンスのことをいたく気に入り、全面的に彼の曲をフィーチャーしたアルバムを作るアイデアを持っていました。マイルスの死により、それは実現しなかったけれど。
パット・メセニーは、好きなアーティストとして、アントニオ・カルロス・ジョビンと並びイヴァン・リンスの名前を挙げています。
イヴァン・リンスって誰だ?
イヴァン・リンスは1945年、ブラジルのリオデジャネイロに生まれました。1971年のソロ・デビュー作「Agora」で早くも、ブラジル音楽界の注目を集めます。
80年代に入り、クインシー・ジョーンズの紹介で、欧米ミュージッシャンの間にもイヴァン・リンスの名前は急速に広がります。パティ・オースティン、デイブ・グルーシン、サラ・ヴォーン、バーバラ・ストレイサンド、マンハッタン・トランスファー、ジョージ・ベンソン、エラ・フィッツジェラルドなどなど、多数の大物アーティストが彼の曲を愛し、採り上げました。
スティングが、2000年のグラミー賞「ベスト・男性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス」を受賞した「She Walks This Earth」も、イヴァン・リンスの作曲によるものなんです(原曲「Soberana Rosa」)。
イヴァン・リンスの魅力は、正にその曲造りにあります。
ボサノバなど、ブラジルのポピュラー・ミュージックの基本はすべて押さえています。その上で、イヴァン・リンスの音楽には、幾重にもひねりが加えられているんです。
その鍵は、「コード」にあります。
イヴァン・リンスの曲は、一聴くしたところ非常に親しみやすいメロディーと、ポップな感覚にあふれています。でも、その裏側で流れているコード進行は、尋常じゃありません。
ブラジルのポップスは、もともと和声の面で非常に高度で洗練されています。
その中でも、イヴァン・リンスのコード進行に対する工夫の仕方はすごいんです。本人も、「どのメロディーに対し、どのようなコードが使えるか、徹底的に検討する」と言っているほど。分数コードは当たり前として、どんどんジャズ的、不協和音的に展開されます。
入り口は普通の和音。だけど、時間の経過と共にどんどん転調していく感覚、と言いましょうか。夢幻的に曲が展開していきます。
それが、たまらなくモダンであり、またロマンチックなんです。
わたしも、かつてミュージッシャンのはしくれとして、イヴァン・リンスの曲のコピーを試みましたが、なんせ普通じゃないんで、苦労しました。
1989年、アルバム「ラヴ・ダンス/Love Dance」で、本人もついに「西側」デビューを飾ります。ほとんど英語で歌いました。アレンジはフュージョン界の巧者ラリー・ウィリアムス。ブレンダ・ラッセルとのデュオ「You Moved Me To This」なんて、むちゃくちゃカッコいいです。
でも、それほどヒットせず、次の「Awa Yio/魂への讃歌(1991年)」も、イマイチの売れ行き。
どうも、本意でないのに英語で歌わされたようで、イヴァンは失意のうちにアメリカのマーケット進出を断念します。
その後は、本国ブラジルでコンスタントにアルバムを出し続け、現在に至っています。
イヴァン・リンスのアルバムは数が多いのですが、どれも当たり外れなく、高度な楽曲と、しっかりしたヴォーカルに満ちており、安心して聴くことができます。
今回特におすすめする、「Anjo de Mim」は、そんな、イヴァン・リンスが1995年に発表した作品です。
落ち着いた雰囲気の中で、実に堂々と、熱くロマンチックに歌い上げるイヴァンリンスの王道路線。本人いわく「このアルバムは、全体を通してリオを感じさせるサウンドになっている。サンバ、ボサノヴァ・・・。どれも、アントニオ・カルロス・ジョビンに通じるテイストで。理由は一つ“自分はカリオカである”という個人的なルーツへの回帰が僕をそうさせるんだ」。
生まれ故郷のリオへの想いを込めて。ブラジル人としての自分のルーツをしっかり見つめ直した、イヴァン・リンスのひとつの転機を示す傑作です。
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同郷の巨人、アントニオ・カルロス・ジョビンに対する限りない敬意を込めて、イヴァン・リンスは2001年、「Jobinlando」という作品を発表します。「ヂンヂ」といった、ジョビンの代表曲を歌い、合間に自分の作品をはさむ構成。みずからも、ブラジル音楽の長い伝統と無縁ではなく、先達の大いなる遺産の下に成り立っているのだと、謙虚な気持ちを込めているようです。
イヴァン・リンスの世界的知名度は、ジョビンに大きく劣るかもしれません。でも、その個性は、世界中のポピュラー・ミュージックに大きな影響を及ぼしています。
ブラジル音楽の無限の奥深さ。イヴァン・リンスの音楽に触れるたびに、その深みを垣間見ることができる気がするんです。
さて、そのほかのおすすめは:
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Cantando Historias
2004年のライブ盤。地元リオのクラブということで、こじんまりした雰囲気の中、イヴァン・リンスを愛する聴衆が、暖かく彼を包んでいます。リンスも絶好調。一時、声が衰えたなんて言われましたが、気心の知れたバンドの演奏に乗って、なかなか精力的なパフォーマンスを繰り広げます。リンスの「今」を知るには、うってつけ!
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ラヴ・アフェアー A Love Affair
故マイルス・デイビスの遺志を継いで、ジェイソン・マイルスが手掛けたイヴァン・リンスのトリビュート・アルバム。スティング、チャカ・カーン、グローバー・ワシントンJr.、ヴァネッサ・ウィリアムス、ブレンダラッセル 、ダイアン・リーブス、マーカス・ミラー、ウイル・リー、ヴィニー・カリウタといったイヴァン・リンスの音楽を愛する「欧米の」著名ミュージシャンが集合しました。とにかく、リンスの音楽を身近にまとめて聴くには一番イイかもしれません。スティングのグラミー賞受賞曲も入ってます。
「ラヴ・アフェアー」も、Amazonで。 |
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HMVでもご覧いただけます(「GO」を押してください)
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<アルバム・データ>
発表年: 1995年
レーベル:Velas
曲目:
1. ANJO DE MIM
2. MENINO
3. SAUDADES DE CASA
4. PRA ALEGRAR CORACAO DE MOCA
5. E DE DEUS
6. LEMBRA DE MIM
7. CAMALEAO
8. TE AMO
9. DESDE QUE O SAMBA E SAMBA
10. NOTURNA
11. VINTE ANOS BLUES
12. BONITO
13. SERA POSSIVEL
14. BOM VAI SER |
プロデューサー: Eduardo Gudin
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<主要アルバム>
Agora...1971

Deixa o Trem Seguir 1972

Quem sou Eu ? 1972

Modo Livre (Abre Alas) 1974

Chama Acesa 1975

Somos Todos Iguais Nesta Noite 1977

Nos Dias de Hoje 1978

Ivan Lins, A Noite 1979

Novo Tempo 1980

Daquilo que Eu Sei 1981

Depois dos Temporais 1983

Juntos 1984

Live at Buenos Aires 1984

A Doce Presenca 1986

Ivan Lins 1986

Maos 1987

Amar Assim 1988

Abre Alas 1989

Love Dance 1989

20 Anos 1990

Awa Yio 1991

A Doce Presenca 1994

Anjo de Mim 1995

Natal com Ivan Lins 1995

Ivan Lins, Chucho Valdese Ikakere ao Vivo 1996

Viva Noel Velas 1997

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