ダニー・ハサウェイ / ライヴ
Donny Hathaway / Live
史上最高のライブはこれです。
ブラック・ミュージックという枠を超えた、別次元の感動があなたをつつみます。ちょっとおおげさに言うと、「人間として」の根源に触れるというか・・・。
ダニー・ハサウェイは1979年、33歳の若さで自ら命を絶ちました。
残したスタジオ・アルバムはたった3枚。
でも、72年に発表されたこのライヴ・アルバムによって、ダニー・ハサウェイは歴史に名を残しました。全米18位。個人としては唯一のゴールド・アルバムとなったんです(72年、ロバータ・フラックとの共演アルバムもゴールド)。
アナログA面は1971年8月。場所はロス・アンジェルスの「トゥルバドール」。B面は2ヶ月後。ニューヨークの「ビター・エンド」にて。
ライヴ・ハウスなので、観客はせいぜい100人前後でしょう。99%黒人なはず。これが、熱くてむんむん。ダニー・ハサウェイへの愛をほとばしらせ、ものすごい一体感なんです。
マーヴィン・ゲイの傑作「ホワッツ・ゴーイング・オン」でジャジーに幕を開けたあと、いきなりクライマックスが訪れます。
ラテン的に流れるようなリズムの上を、ダニー・ハサウェイが軽快に「ウィーリッツァー・ピアノ(エレクトリック・ピアノのひとつ。ローズ・ピアノより小型で、独特なポップ・サウンド)」を弾きたおします。歌われるのは「ゲットー(The Getto)」。
「(俺たちの街)ゲットーのことを話そうぜ。パーティの毎日。神のお加護を!」
12分にも及ぶ曲の後半に差し掛かると、観客との掛け合いが始まります。まず、女性陣からお先に。「Talikin' bout the getto」。お次は男性陣。「The getto」。まるで練習したように、乗りのいいリズムで激しく盛り上がります。これを「一体感」と呼ばずしてなんと呼びましょう。日本のコンサートの「手拍子」ってのとぜんぜん違うんですね。
本作が録られた30年前。出口の見えないヴェトナム戦争と社会不安。そういった時代背景も胸に・・・。
黒人社会のことを語るような、経験も知識もわたしにはありません。黒人の国務長官が生まれるようになり、その社会的地位は改善されたんでしょう。それでも、アメリカ社会に厳然と存在する差別。日々の生活に横たわるそれらのストレスを、明るくぶっ飛ばすのが「スポーツ」であり、「ダンス」であり、「「音楽」なんでしょう。
「ゲットー」における観客の叫びにも似たコーラスは、黒人であることの切なさと、屈折した喜び、そして誇りを高らかに歌い上げています。ダニー・ハサウェイは、オーディエンスの心を完全にわしずかみにし、一体感を超えた「奇跡の空間」を作り上げています。初めて聞いたときの衝撃と感動。今でも、聴くたびに目頭が熱くなってしまうんです。
続くハイライトは「きみの友だち(You've Got A Friend)」。言わずと知れたキャロル・キング作、ジェイムス・テイラーの全米1位ヒット。リラックスした雰囲気のなかで、客席との合唱が花開きます。あたたかいやり取りを聴くだけで、ただ幸せな気持ちになっていきます。白人の曲を、こだわりなく採り上げるダニー・ハサウェイのふところの広さ!
もうひとつの白人曲、ジョンレノンの「ジェラス・ガイ」を経てから、最後の「エヴリシング・イズ・エヴリシング」へ。これも13分を超える、インストゥルメンタルの力作です。もう、とにかく乗り乗りでかっこいいんだわー。
ここは、脇を固めるバンド・メンバーに拍手でしょう。ギタリストはA面をフィル・アップチャーチ、B面をフィル・アップチャーチが分けます。ドラムはアース・ウィンド&ファイアーを結成するフレッド・ホワイト。ベースはウィリー・ウィークス。そのほか、サイド・ギター、パーカッションがタイトにサポートします。
ダニー・ハサウェイの遺作、73年の「愛と自由を求めて(Extension Of A Man)」を聴くと、彼がどんなに遠くを展望していたか分かります。大胆にオーケストラをフィーチャーして、ゴスペルからクラッシックまで包含する意欲作。しかし同時に、あまりに生真面目で繊細な彼の個性が出ており、現実とのギャップの中で孤独の世界に落ちて行ったのも判るような気がします。
合掌。。。
さて、今年になってRhinoより、過去のライブと未発表音源をまとめた「These Songs For You, Live!」が出ました。すばらしい企画で、資料的価値も高いのですが、複数の会場の演奏を収めたので統一感がありません。やっぱり、せまっくるしいハウスで、客席と騒ぎまくる「ライヴ」の楽しさにはかないませんね。

|
<アルバム・データ>
発表年:1972年
レーベル:Atlantic
曲目:
1.愛のゆくえ 2.ゲットー 3.ヘイ・ガール 4.きみの友だち 5.リトル・ゲットー・ボーイ 6.ウィ・アー・スティル・フレンズ 7.ジェラス・ガイ 8.エヴリシング・イズ・エヴリシング
|
 |
<主要アルバム>
1971年 Donny Hathaway
89位

1971年 Everything Is Everything
(70年発表)73位

1972年
Live 18位 ゴールド
1972年 Roberta Flack & Donny Hathaway 3位、ゴールド

1973年 Extension Of A Man
69位

|
|