シック / リスク
Chic / Risque
「一番おしゃれなブラック・ミュージック」と言えば、やはり、「シック」でしょう。
ギタリストのナイル・ロジャースとベーシストのバーナード・エドワーズが中心となり、スタジオ・ミュージシャンをかき集めて、シックはスタートしました。
1977年のシングル、「ダンス、ダンス、ダンス」が、いきなり全米6位、100万枚突破のヒットに。
「メンバーを固めて、ツアーにも出るように」、というレコード会社の指示を受け、二人の女性ヴォーカルとドラマーのトニー・トンプソンを加えて、シックが確立します。
そして、1978年に発表されたシングル「ル・フリーク/Le Freak」は、6週連続全米1位、売り上げ200万枚突破という、世界的なメガ・ヒットとなりました。
ナイル・ロジャースの、ドライでシャープなギター・カッティング。バーナード・エドワーズの粘っこくグルーブするベース。トニー・トンプソンのロックっぽくパワフルなドラム。かくし味のストリングスとピアノ。その上を、切れ味するどく無機質なヴォーカルがからむ。
タイトでクール。
シックの魅力が満開です。
「リスク/Risque」は、1979年発表のサード・アルバム。全米チャート5位、100万枚突破。シックの全盛期を極める作品です。
シングル・カット「グッド・タイムス/Good Times」は、またも全米1位、100万枚。冒頭から、いきなり8分間を超えるグルーブが炸裂します。バーナード・エドワーズのくり出すベースのカッコいいことと言ったらありません。決め決めのフレーズは、一聴したところシンプルそうですが、微妙なおかずのノリ・ツッコミで、これがコピー不可能なほど難しいんです。
そのほか、ファンキーな「My Feet Keep Dancing(ブラック・チャート42位)」や、「My Forbidden Lover (ポップ・チャート43位, ブラック・チャート33位)」が中ヒット。ボブ・クリアマウンテンによるエンジニアリングも光り、クールな統一感いっぱい。今聴いても、そのユニークさに感じてもらえるはずです。
さて、さらにすごいのが、プロデューサーとしてのナイル・ロジャースの活躍です。
代表的なアルバムを抜き書きしただけでも、その「すごさ」が分かっていただけると思います(主要プロデュース作品は右記)。
| アーティスト |
アルバム |
発表年 |
最高位 |
売上枚数 |
| シスター・スレッジ/Sister Sledge |
We AreFamily |
1979年 |
3位 |
100万枚以上 |
| ダイアナ・ロス/Diana Ross |
Diana |
1980年 |
2位 |
100万枚以上 |
| デヴィッド・ボウイ/David Bowie |
Let's Dance |
1983年 |
4位 |
100万枚以上 |
| マドンナ/Madonna |
Like a Virgin |
1984年 |
1位 |
1000万枚以上 |
| デュラン・デュラン/Duran Duran |
Notorious |
1986年 |
12位 |
100万枚以上 |
| B-52's |
Cosmic Thing |
1989年 |
4位 |
400万枚 |
なんと言っても、最大のヒットがマドンナの「ライク・ア・バージン」。3週連続全米1位。売上は、アメリカだけで1000万枚以上。その後のマドンナ成功の突破口になったのは、あまりにも有名です。
デヴィッド・ボウイのファンキーな新生面を打ち出し、圧倒的な復活劇をもたらしたのが、「レッツ・ダンス」。
ダイアナ・ロスも、ぐっと新しいイメージでカムバックしました。
ロックとソウルの垣根を越え、トップ・アーティストに新たな刺激を与え、次元の違う成功をもたらす。ナイル・ロジャースの名声は、まさに天下にとどろきました。
私がナイル・ロジャースのプロデュース力を再認識したのは、1986年、アル・ジャロウの「L is for Lover」です。
アル・ジャロウと言えば、ジェイ・グレイドンのプロデュースと決まっているのに、なぜナイル・ロジャースなの?当時(も今も)グレイドン・フリークだった私は、「けっ!」てな調子で不満たらたらCDをトレイに乗せました。
と、ところが、どうだ?
1曲目の「Tell Me What I Gotta Do」を聴いて、思わず「ハッ」としました。コンプレッサーの利いた心地よいスネア・ドラム、高音を強調したフィリップ・セスのDX7エレピ、定番のロジャースのギター・カッティングとブルージーなソロ。
そこに、今まで聴いたことのない新しいアル・ジャロウが羽ばたいていたんです。
おまけに、作曲者の一人はジェイ・グレイドン。楽曲の構造は今までどおりなのに、全然ちがうイメージを創り出している。
恐るべし、ナイル・ロジャース!
ちょっと脱線しますが、ブラック・ミュージックの真髄は、その「快感原則」にあると思っています。機材がチープだろうとなかろうと、「自分が気持ちいい音に忠実」ということです。そういう意味で、アル・ジャロウのこの「スネア」の音は、ただひたすら気持ちよく、何時間でも聴いていたいサウンドなんです。
一方、私の愛するジェイ・グレイドンですが、やや「頭でっかちな完璧主義」のところがありまして、それが魅力でもあり、欠点でもあったと思っています。スネアの音は、恐らく1000以上のサンプルから厳選し、コンプレッサーなどのエフェクトも「これ以上綿密にはかけられない」というほど、神経を使ったはず。シークエンサーによる出音タイミングも、最小単位のクオンタイズで、グルーブ調整していたはずです。
でも、グレイドンの使う「スネア・サウンド」だけは、「気持ちいい」と思ったことはありません。
「快感原則に従わなかったこと」。それが、グレイドンが「大」プロデューサーに今一歩届かなかった理由なのかもしれません。
ナイル・ロジャースは、スネアの「タ〜ン!」一発に、マドンナの掛け声「ヘイ!」一発に、ある種の説明できない「快感」を大切にしたので、多くの人々を「気持ちよく」することができたのかもしれません。
さて、ところで、相棒のバーナード・エドワーズも、ロバート・パーマー(ヴォーカル)、デュラン・デュランのジョン・テイラー(ベース)、アンディ・テイラー(ギター)、トニー・トンプソン(ドラムス)からなるスーパー・グループ「パワー・ステイション」をプロデュース。全米6位、100万枚突破のヒットを生み出しています。
これも、むちゃくちゃカッコいいです。特に、トンプソンの破壊的ロック・ドラムは必聴!
実は、バーナード・エドワーズも、トニー・トンプソンも既に故人となってしまいました。今では、シックの新作も、オリジナル・メンバーでのステージも楽しむことはできません。その「おしゃれ」な世界の一端に触れていただくのは、彼らのアルバムを通してしか方法がないんです。
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<アルバム・データ>
発表年:1979年
レーベル:Atlantic
曲目:
1.Good Times
2.Warm Summer Night
3.My Feet Keep Dancing
4.My Forbidden
Lover
5.Can't Stand to Love You
6.Will You Cry (When You Hear This
Song)
7.What About Me
プロデュース:
ナイル・ロジャース、
バーナード・エドワーズ
エンジニア:
ボブ・クリアマウンテン
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<Chic主要アルバム>
1977年
CHIC 27位 50万枚

1978年
C'est Chic 4位 100万枚

1979年
Risque 5位 100万枚
1980年
Real People 30位

1981年
Take It Off 124位

1982年
Tongue in Chic 173位

1983年
Believer

Chic-ism

1999年
Live at the Budokan

<ナイル・ロジャース
主要プロデュース作>
1978
Norma Jean Norma Jean
1979
Sister Sledge We AreFamily

1980
Sheila B. and DevotionKing of the World
Diana Ross Diana

Sister Sledge
Love Somebody Today
1981
Debbie Harry Koo Koo

Diana Ross To Love Again
1983
Southside Johnny Trash it Up
David Bowie Let's Dance

Paul Simon Hearts & Bones
Michael Gregory Situation X
1984
Laurie Anderson
Mister Heartbreak
Duran Duran Arena
INXS The Swing
Madonna Like a Virgin
Diana Ross Swept Away
1985
Thompson Twins
Here's to Future Days
Mick Jagger She's the Boss

Sister Sledge When the Boys Meet the Girls
Bryan Ferry Boys & Girls
Sheena Easton Do You
Jeff Beck Flash

1986
Al Jarreau L is for Lover
Grace Jones Inside Story

Duran Duran Notorious

Philip Bailey Inside Out
1987
Outloud Outloud
Terry GonzalezIs There Rockin' in this House
1988
Christopher Max More Than
1989
B-52s Cosmic Thing

Dan Reed NetworkSlam
Eddie Murphy So Happy
Diana Ross Workin' Overtime
1990
Cathy Dennis Move to This
Paul Young Other Voices
Vaughan Brothers Family Style
Stray Cats Let's Go Faster
Paul Young A Little Bit of Love
1991
Ric Ocasek Fireball Zone
Dan Reed NetworkHeat
1992
B52's Good Stuff

1993
Southside Johnny All I Want is Everything
1994
Jimmie Vaughan Strange Pleasure
David Lee Roth Your Filthy Little Mouth
Wet Wet Wet Part One
1997
David Bowie Little Wonder
INXS Shine Like It Does
Samantha Cole Samantha Cole
1998
Jimmi Vaughan Out There
All Four One On and On
2004
Soul Decision Shady Satin Drug
Duran Duran Astronaut
B-52's Paperback Writer
2001
Tina Arena Just Me
Cheb MamiDellali
2000
Strangefolk A Great Long
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